2012/05/16 10:37 に Hosyuko Admin が投稿
アメリカの現代史において9月におきた悲しい出来事といえば、今は誰もが9月11日を思い浮かべると思いますが、昨年の同時テロ事件までは、多くの人が1963年9月15日バーミングハム市街で起きた16th Street Baptist Churchの爆弾事件を思い起こしました。事件から39年たった今年の5月、この事件の最後の被告に対して無期懲役の判決が下ったというニュースが連日大きく取り上げられたほか、日本のメディアも報道していましたので、耳にした方も少なくないと思います。
1954年、連邦最高裁判所が学校における人種の分離(白人・黒人別々の学校)を合衆国憲法に反するとして違憲判決を出した後も、特に南部諸州では人種の分離/差別が維持され、これに反対する人々と支持する人たちの対立が深まっていました。爆弾事件が起きた1963年、バーミングハムでは4月から5月にかけ人種差別に反対する人々のデモンストレーションに対して、警察が消火栓からの放水や警察犬を使うなどの実力行使で対抗、多数の逮捕者が出たほか、6月にはアラバマ大学に入学しようとする黒人学生の前に立ちはだかりその入場を阻止しようとする州知事と、入場する学生を守ろうとする合衆国政府指揮下の兵士との対立が発生するなど、アラバマでも緊張が高まっていました。更に、8月にはバーミングハムやハンツビルなどの学校に対して連邦裁判所が人種分離をやめるよう命令を出し、これを州知事が拒否する事態となり、一層難しい状況を迎えていました。
そんな状況の中、9月のある日曜日の朝に事件は起こりました。日曜礼拝に多くの人が集まった教会の地下室で、しかけられた爆弾が爆発、4人の黒人少女の命が奪われたのです。また、事件後の混乱の中で更に2人の黒人が警察官らによって命を奪われました。公民権運動の活動家や黒人のビジネスを標的とする爆弾テロ事件は、それまでもバーミングハムで散発していまし たが、教会が狙われ少女の命が奪われたこの事件は、公民権運動にまつわる出来事の中でもとりわけ多くの人々の心に深く刻まれたといわれています。
ちなみにこの事件の被疑者とされた4人ですが、最初の一人に対する有罪判決が1977年、2000年に起訴された2人に対してそれぞれ去年と今年5月に有罪判決、そしてもう一人は法廷で裁きを受けることなくこの世を去りました。一応の決着が図られるまで39年もの年月がかかった事実、しかし一方で歳月が流れてもなお刑事責任を執拗に追及する姿。その両者から、アメリカ社会における人種問題の根深さを感じさせられます。
この16th Street Baptist Churchの向かい側に、人種差別や公民権運動の歴史を分かりやすく展示しているCivil Rights Institute(公民権記念館)が建っています。 "Rosa Parks" "Bus Boycott" "Freedom Rides" "16th Street Baptist Church" "March on Washington" "I have a dream" "Bloody Sunday" "Selma to Montgomery March" これらの言葉は今も多くの人々の記憶に残っている言葉であり、受け継がれている言葉です。子供たちは教室でこれら公民権運動の歴史を学び、またField TripでこのCivil Rights Instituteを訪れます。「Segregation」という言葉が背負っている歴史、アラバマとアメリカ史のより深い理解のために是非見学されることをおすすめします。Civil Rights Instituteは16th Street と 6th Ave. North の交差点に位置しています。
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